軽症でも脳に損傷。認知機能に影響も
2022-04-08

セルスペクト(株)科学調査班編集

2022年4月8日更新

 

 新型コロナウイルスに感染すると、たとえ軽症であっても脳が損傷する可能性があると、英国オックスフォード大学の研究チームが突き止めた。

遺伝や生活環境と疾患の関係を調査する英国の機関「UKバイオバンク」が収集したデータから、感染者(785人)と健常者の脳を比べたところ、軽症含め感染者は、脳が収縮しており、嗅覚や味覚、記憶に関連する領域の灰白(カイハク)質が小さくなっていた。

 

 さらに、患者の感染前と感染後5か月後の脳を、MRI検査(磁気共鳴断層撮影)で比較したところ、感染後は脳全体の大きさが0・2〜2%小さくなっていた。特に、嗅覚や記憶をつかさどる部分が収縮して、認知機能(理解、判断)機能が低下し、患者は複雑な知能課題をこなすのも難しい状況になっていた。重症患者ではない軽症患者であっても、同様の結果だった。

 コロナ感染以外で肺炎を発症した人には見られない現象のため、新型コロナ感染の特有の症状と言える。

 

 収縮が顕著だったのは嗅覚関連の領域だったが、ウイルスの攻撃によって損傷したのか、感染によって嗅覚を失い、その領域が使用されなくなったため収縮したのか、原因はわかっていない。また、全ての変異株でこの現象が起こるかも、まだわからない。

 新型コロナ感染の特徴は、感染初期に見られる嗅覚や味覚の異常や、脳に霧がかかったような状態(ブレイン・フォグ)による集中力の低下、倦怠・疲労感、記憶障害、頭痛などの後遺症があることだ。

 

 今回発見された脳の損傷は、これらの症状の原因である可能性が高いと言われている。脳が損傷する経緯や経過を調べ、発症のメカニズムを解明できれば、コロナ特有の症状を緩和する治療法の発見につながるだろう。

 

引用文献:

  1. Gwenaëlle Douaud et al., Mar 7 2022, “SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank” Nature.
  2. Robert Hart, Mar 8, 2022 “Even Mild Covid Can Cause Brain Damage, Study Suggests” Forbes.
  3. Mar 7, 2022, “Brain regions related to smell show decline following mild COVID-19”University of Oxford Press

 

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