セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年9月22日更新
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ有力な製品として、鼻の中に噴霧するタイプのワクチン(経鼻ワクチン)が、世界中で開発されている。
現在普及している、腕に注射するタイプのワクチンは、重症化や死亡を防ぐ効果はあるものの、ウイルスの侵入(=感染)を防ぐ効果については限定的だった。
経鼻ワクチンは、ウイルスの侵入口である鼻や、喉の粘膜の免疫力を高めるため、感染自体を防ぐことができるという。
注射型のワクチンを接種すると、血液中に「IgG」というタイプの抗体が増える。このIgGがウイルスの増殖を抑制し、重症化や死亡を防いでくれる。しかしIgGは、ウイルスの侵入口である「粘膜」には分泌されないため、感染自体を防ぐことは難しかった。
それに対し、経鼻ワクチンは、粘膜に分泌される抗体「IgA」を増やす作用のため、感染予防に非常に効果が高いと言われている。
中でも、「Toll(トル)様受容体 =TLR」※ の活性化剤を添加した経鼻ワクチンを使用すると、(添加していないワクチンの使用時と比べて)IgAとIgGの量が100~1000倍増えるとわかっている(米国科学振興協会の医学雑誌「Science Translational Medicine」参照)。
そのため、開発中の経鼻ワクチンは、ほぼTLR活性化剤が用いられている。
※ウイルスを感知して、免疫細胞を作動させる機能を持つたんぱく質
新型コロナウイルスが大流行するまで、経鼻投与型ワクチンの開発は非常に少なかった。米製薬大手アストラゼネカ社でも、インフルエンザ用の1種類しか販売していなかった。
新型コロナの登場から世界中で開発が進み、9月6日、ついにインドの製薬会社バーラト・バイオテックが、新型コロナ用経鼻ワクチンの販売に踏み切った。日本では塩野義製薬が、販売に向けて開発を進めている。
経鼻投与型ワクチンは、注射を打つ医療系人材が要らないため、医療環境が整っていない地域で普及させやすい。今後さらに感染力の強い変異株が蔓延する可能性がある中、投与が簡単で、感染自体を防ぐ経鼻ワクチンの開発にますます期待が寄せられている。
引用文献:
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