セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年10月28日更新
新型コロナに感染した高齢者は、1年以内に認知症の一種であるアルツハイマー病を発症する可能性が高いことがわかった。
オランダの医学雑誌「Journal of Alzheimer's Disease」に掲載された研究によると、65歳以上の新型コロナ感染者は、同歳以上の未感染者に比べてアルツハイマーの発症率が、50~80%も高まる可能性がある。新型コロナ感染が、アルツハイマー病を引き起こす理由(経緯)は調査中だ。
この研究は米国で、2020年2月2日~21年5月30日の間、アルツハイマー病の既往歴のない65歳以上の600万人を対象に実施。
人種(ヒスパニック、白人、黒人)、年齢(65~74 歳、75~84 歳、 85歳以上)、性別(男、女)に分類し、新型コロナに感染したと診断された日から1年間を追跡。分類ごとにアルツハイマー病の発症率を調べた。
研究では、「新型コロナ未感染者の発症率」を分母に、「新型コロナに感染した人の発症率」を分子に置いたHR(ハザード)比から、新型コロナの影響度を調査。この計算で1より大きい値になれば、新型コロナ感染からアルツハイマー病の発症率が高まったことを示す。
結果、どの分類も1以上の値となり、中でも高い数値だったのは、「85歳以上」、「女性」だった。
人種別では、「黒人」は1・62、「白人」は1・61、「ヒスパニック」は1・25と、白人と黒人の値が高かった。
年齢別では、「65~74 歳」は1・59、「75~84 歳」が1・69、「85 歳以上」が1・89と、年齢が上がるほど値が高くなった。
性別では、「男性」1・5、「女性」1・82と、女性の方が高かった。
新型コロナウイルスがアルツハイマー病の原因を作りだすのか、もともとある因子を誘発するのかなど、発症のメカニズムは調査中。対象者の過去の生活習慣や持病を調べるなど、長期の追跡調査とデータ検証が必要だ。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計によると、2020年における65歳以上の認知症有病率は16.7%。認知症患者は約602万人で、6人に1人程度が認知症といえる。
認知症有病率は2060年には33・3%まで上昇すると予想されるが、認知症を完治させる治療法はいまだ無い。
もし、新型コロナの感染が認知症の発症率をさらに高めるとしたら、介護負担の深刻化が懸念される。発症のメカニズムを突き止め、早期に予防策を講じる必要がある。
引用文献:
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