セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年11月11日更新
日本国内における2021年度のマスク生産量※は、約160億枚。2018年は55億枚だったことから、新型コロナウイルスの流行で約3倍に増えたことになる。
※一般社団法人日本衛生材料工業連合会調べの「マスク生産数量」より。産業用、医療用、家庭用を合わせた数字。
一般的な使い捨てマスクの原料は、石油由来のプラスチック。プラスチックは、耐久性が高く、加工しやすい一方で、自然分解されず、半永久的に残るという欠点がある。
大量生産と消費に伴い、適切に廃棄されなかったマスクが、海や川に流れ出て環境を汚染したり、廃棄(焼却)時に大量の二酸化炭素が出て地球温暖化を促進するなど、使い捨てマスクがもたらす環境汚染や生態系への影響が、近年問題視されていた。
そんな中、アメリカ食品医薬品局(FDA)が10月、世界で初めて植物由来のマスクを、医療用マスクとして緊急使用許可※した。
※緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)
米食品医薬品局(FDA)が緊急時に未承認薬などの使用を許可したり、既承認薬の適応を拡大する制度
この植物由来のマスクは、カナダのバイオテクノロジー企業PADMメディカルが開発したマスクで、「プレシジョン エコ」という。
原料は、植物から作った有機物質(バイオポリマー)で、 微生物によって分解・発酵されて自然(土)に還るのが特徴。肥料(たい肥)になるため、産業活用できる。
また、廃棄(焼却)時に出る二酸化炭素は、原料の植物が育つ時に吸収したもののため、大気中の二酸化炭素量が変わらない。石油由来のマスクより、二酸化炭素の排出量を55%も抑制できると言われている。
形や機能は、一般的な医療用のサージカルマスクと同じ。通気性がよく、 細菌やウイルスへの防御力は98%と高く、口や鼻からの飛沫をしっかりと遮断する。
細菌濾過率(BFE%)、微粒子濾過率(PFE%)、呼吸抵抗性(mmH2O/cm2)、延焼性(Class1)透過性などは、全て国際基準を満たしているという。
PADMメディカルのマーティン・ペトラック(Martin Petrak)最高経営責任者は「今回の緊急使用許可が、環境配慮性の高い製品の開発を後押しするだろう」と、あるメディアのインタビューで語っている。
今年4月には、微生物の働きで土に還る生分解性の医療用ゴム手袋が、医療機器としてFDAに認証された。環境保全を意識した製品が、市場に流通し始めている。
新型コロナの感染拡大がいまだ続く中、持続可能な環境づくりを意識した医療関連製品は、今後重宝されるだろう。
引用文献:
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