ネイチャー今年の10人に、新型コロナ関連2人
2023-01-13

セルスペクト(株)科学調査班編集

2023年1月13日更新

      

 

 英科学誌ネイチャーは昨年12月、2022年に科学分野で話題になった10人を選出した。パンデミック3年目とあって、新型コロナウイルスの感染拡大の抑制に貢献した研究者が2人いる。  今回は彼らの成果を紹介しよう。

 

 

 

 北京大学ゲノミクス※研究者の曹雲龍(ユンロン・カオ)氏は、新型コロナの感染やワクチンによってできた抗体の遺伝子を分析し、次に流行する変異株の特徴を予測することに成功した。

 

 

※ゲノミクスとは「遺伝子(Gene)とゲノム(Genome)の研究」のこと。ゲノムとは、「Gene」と全てを意味する「-ome」を合わせた造語。人体の〝設計図〟といえる遺伝子情報全体を表す。

 

 

 カオ氏は、抗体を産出する免疫細胞の一つ「B細胞」を解析し、これまで流行した変異株やワクチンで作られた抗体の設計図を検証。それらの抗体をすり抜ける〝抜け穴〟を見つけることで、これから発生するであろう変異株の特徴を予測した。

 

この予測によって、発生前にその株に対応するワクチンや治療薬を開発することができるため、パンデミックを防げると言われている。

 

 

 

 もう一人は、新型コロナの後遺症を研究するグループ「Patient-Led Research Collaborative」の設立者リサ・マコーケル(Lisa McCorkell)氏。

 

新型コロナをはじめとする感染症の研究は、死亡や重症化を防ぐ対症療法や感染防止関連は注目度が高く、研究が進みやすい。その反面、回復の判別がしにくく、患者数が限られる後遺症の研究は進みにくい傾向にある。

 

 マコーケル氏は、新型コロナの後遺症に悩む自身の経験をもって後遺症の影響を発信し、関連研究を促進させようと、同じく後遺症に悩む4人の女性と同グループを立ち上げた。

 

この活動が多くの研究者の目に留まり、パンデミックが収束に向かう中でも順調に会員数を伸長。現在は、影響力の大きい新型コロナ関連のプロジェクトを支援する基金「Balvi」から寄付された480万ドルで、後遺症の研究を促進している。

 

 この取り組みによって、人知れず後遺症に苦しむ人が心身共に救われ、後遺症がハンデにならない社会環境が整備されることが期待されている。

 

 

 

そのほか選出された8人は、▽サル痘の大流行を抑えるための重要な情報を提供したニジェールデルタ大学の感染症専門医Dimie Ogoina(ディミー・オゴイナ)▽NASAの天文学者Jane Rigby (ジェーン・リグビー) ▽国際気候変動開発センター所長Saleemul Huq (サレムル・フク) ▽ウクライナ出身の気候学者Svitlana Krakovska (スビトラーナ・クラコフスカ) ▽カリフォルニア大の人口統計学者Diana Greene Foster (ダイアナ・グリーン・フォスター) ▽国連事務総長António Guterres (アントニオ・グテーレス) ▽メリーランド大医学部の外科医Muhammad Mohiuddin (ムハンマド・モヒウディン) ▽米国科学技術政策局 (OSTP) の政策顧問Alondra Nelson(アロンドラ・ネルソン)。

 

 

引用文献:

  1. Ewen Callaway et al., Dec 14, 2022, “Nature’s 10 Ten people who helped shape science in 2022” Nature
  2. Dec 15, 2022, “Nature’s 10 Ten people who helped shape science in 2022” Nature Asia

 

 

 

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