セルスペクト(株)科学調査班編集
2023年4月14日更新
新型コロナウイルスに感染すると、長期にわたる胃や腸などの疾患(後遺症)が発症しやすくなることを、米ワシントン大学が立証した。のべ約1400万人の長期的なデータから、新型コロナが及ぼす後遺症の実態を調査。腸内環境と消化器官の後遺症の関係性を明らかにし、腸内環境の健全化が、肺などの後遺症も防ぐと唱えた。
新型コロナウイルス感染者に見られる後遺症は、疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、嗅覚障害、筋力低下、睡眠障害など様々ある。
中でも多いのは、便秘や胃痛、下痢、胃もたれ、嘔吐などの消化器官の症状で、この原因は、ウイルスの侵入による腸内環境(腸内フローラ※)の乱れにあると、以前から言われていた。
※多種多様な腸内の微生物、菌が集まる集合体の分布
この腸内環境の乱れは、消化器官に半年以上とどまる新型コロナウイルスの影響で、消化器官の免疫細胞が過剰反応を起こすことが原因。ウイルスを除去しようと免疫細胞が過剰に働き、その結果、腸内の悪玉菌が増えて腸の消化・吸収力が落ち、栄養素を取り入れられなくなって、症状(不調)が表れる、と仮説されていた。
これまで、この理論に基づく調査は入院患者に限定され、退院後を含めた長期にわたっての調査がされず、立証できずにいた。
そこで、ワシントン大学が、米国退役軍人のべ約1400万人の1年以上にわたる医療データを調査。新型コロナに感染すると、消化器系の疾患を発症する可能性(リスク)が、未感染者と比べて高まることが明らかになった。
発症のリスクが高まる疾患と発症の確率は、胃や小腸に潰瘍ができる(62%)、胸やけ等を起こす酸逆流症(35%)、急性膵炎(すいえん)(46%)、慢性的な腹部の膨張感や腹痛などを起こす過敏性腸症候群(54%)、急性胃炎(47%)、原因不明の胃もたれ(36%)だった。
これらの症状が起きた人は、仮説通りの原因で腸内環境が乱れていた。
そこで研究者らは、新たに、消化器官と呼吸器が密接に関係する「腸肺軸」の概念に基づく、腸内環境の正常化による呼吸器官の後遺症の予防と治療を提唱している。
消化器官と並んで新型コロナの後遺症で多い、咳や息苦しさなどの呼吸器官(肺)の症状は、腸内環境を整えれば、予防や治療が可能という論理だ。
つまり、ヨーグルトなどの乳酸菌を摂りながら、適度な運動と十分な睡眠をとって規則正しい生活をし、腸内環境を健全に保てば、新型コロナによる後遺症に苦しまずに済む可能性が高まるということ。腸内の健全化が、新型コロナとの戦いに勝つ鍵となろう。
引用文献: