セルスペクト(株)科学調査班編集
2023年5月12日更新
新型コロナの後遺症(long Covid)に効く飲み薬が、英国オックスフォード大によって発見された。「AXA1125」という脂肪性肝疾患向けに使用されている経口薬で、新型コロナの後遺症特有の倦怠感を改善する効果があると発表された。初の後遺症治療薬として注目が高まる。
AXA1125は、中性脂肪の蓄積によって起こる肝障害の再発予防に使われている薬。新型コロナの後遺症が1年半程度続く人に投薬したところ、倦怠感が改善され、副作用も特になかった。この結果から、同大は、新型コロナの後遺症の治療薬として有望だと英医学誌イークリニカルメディスン(eClinicalMedicine)で発表した。
新型コロナ感染による後遺症の倦怠感は、ミトコンドリアの機能不全によって起こる。
体内に侵入した新型コロナウイルスは、体内の各細胞の免疫機能を弱体化させるために、細胞のエネルギー源「ATP(アデノシン三リン酸)」を作りだすミトコンドリアの機能を抑制する。
ウイルスによってミトコンドリアの働きが弱まると、代わりにもう一つのATP産出機能である「解糖系」が作動する。
解糖系は、ATPとともに乳酸も産出するため、体内に疲労物質がたまり、長期の倦怠感、疲労感(=後遺症)を引き起こす。
AXA1125に含まれている5つのアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体は、ミトコンドリアへのエネルギー供給の材料となる。
そのため、服用するとミトコンドリアの機能が回復し、解糖系の働きが弱まるため、倦怠感が改善されるということだ。
国立国際医療研究センターが、新型コロナ感染から回復した20~70代の502人を調査したところ、感染1年半後の段階で25.8%(4人に1人)が、集中力の低下などの後遺症に悩まされていた。
その症状は▽記憶障害11.7%▽集中力の低下11.4%▽嗅覚の異常10.3%▽頭にもやがかかったような状態による思考力の低下「ブレインフォグ」が9.1%▽抑うつ状態7.5%▽味覚の異常5.9%▽息切れ5.6%▽倦怠感3.8%▽脱毛3.5%。
感染時の症状が軽い人でも上記いずれかの症状が続いており、感染時の症状が中等症や重症だった人は、息切れやせき、倦怠感が続く傾向にあるという。
感染時の症状が軽く済んでも、後遺症になる人は少なくない。
AXA1125を日本国内で使用できるのは、薬事承認を経てからと、まだ先のこと。感染症法上の5類に引き下げられたとしても、後遺症で苦しまないために感染予防策を続けてほしい。
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