Cellspect Co., Ltd. 2023年5月19日更新
性行為でウイルスや菌などに感染する「性感染症」が、世界中で急増している。日本では梅毒患者の増加が顕著だが、米国など世界では淋病やクラミジアの感染数の増加が深刻。特に淋菌は変異が速いことから、既存の抗生物質が効かない「スーパー淋病」の急増が懸念されている。
薬への耐性菌を増やさないためには、感染後、早急に抗生剤で体内の菌を死滅させることだ。米国では5月に、従来の検査より数段早く感染を判定し、抗生剤が効くかどうかも判別できる小型機器が開発された。
淋病は、淋菌の感染によって起こる膣炎感染。子宮頸管(けいかん)や尿の炎症を引き起こし、放置すると骨盤感染症や子宮内膜炎、子宮外妊娠、卵管炎などになり、不妊や死産を招く危険性がある。
2020年の世界保健機関(WHO)の調査によると、淋病はクラミジアに次いで2番目に多い性感染症で、年間8240万人が感染している。
注意すべきは、感染の原因である淋菌は非常に変異が速く、過去に複数の抗生剤が効かなくなっていることだ。感染者が増えれば、既存の強力な抗生剤が効かない菌が登場し、治療できない病気になる危険性が高まる。
予防以外で、治療可能な感染症にとどめる手段は、早期の的確な治療につきる。感染早期は菌の量が少なく、薬が効きやすいため、感染した菌を的確に殺す抗生剤を投与すれば、変異を防ぐことができる。
しかし、これまでは感染の検査に約1週間かかり、治療開始まで時間を要していた。そのため、結果を待つ間に感染を広げてしまう危険性があるほか、ようやく治療を始めても、投与した抗生剤が感染した菌に効かず、体内で菌が増殖して、強い抗生剤も効かない菌(スーパー淋病)に変異してしまうケースがあった。
そんな中、今年5月、米ジョンズ・ホプキンス大学が、淋病の感染を即時に判定し、最新の強力な抗生物質「シプロフロキサシン」が効くかどうかも、たったの15分で調べられるポータブル機器「プロンプト(PROMPT)」を開発した。
性器などの分泌液と薬剤を混ぜて専用のプレートに1滴乗せ、機器に入れると、機器内でPCR検査と同じ処理が行われ、15分後に専用のスマートフォンアプリに、感染の有無とシプロフロキサシンが効くかどうかの結果が通知される。
淋病の特定率は97%、シプロフロキサシンの有用性の的中率は100%と、非常に高い。
機器のサイズは縦12.7cm、横8.4 cm、奥行13.4cmと小さく、5ボルトの低い電圧のモバイルバッテリーで動くため、個人病院でも導入しやすい。個人病院で広く使用されれば、多くの人が早期に的確な治療が受けられるようになり、スーパー淋病の増加を防げる。
プロンプトが国内に導入されるのはまだ先のことだが、日本には郵送の性感染症検査キットがある。誰にも知られず、手軽に安価に検査できるので、こっそりと調べたい人は活用してみてほしい。
早めの検査が早期の完治、感染の蔓延予防につながる。恥ずかしいからと検査を避けず、ご活用を。
【プロンプトの実物写真】引用文献1から抜粋
引用文献: