セルスペクト(株)科学調査班編集
2023年7月7日更新
腕に貼り付けるだけで、体内の血糖値やアルコール濃度、乳酸値を常時測定できるパッチ型のウェアラブル機器(身に付けられる次世代携帯機器)が、2022年5月に米カリフォルニア大で開発された。
直径約3cmのパッチ表面にある0.1mm程の極細針(ニードル)から、表皮内の体液を測定し、スマートフォンに結果を送る。2項目以上を同時測定できるウェアラブル機器は初めてで、各値の変化をリアルタイムで追えるため、食事や飲酒、運動の量の目安をつかめる。
このパッチを肌に貼り付けると、極細針の先端に含まれた酵素と、体液のブドウ糖(グルコース)、アルコール、乳酸が反応して微細な電流が発生する。どの針にどれぐらいの電流が流れたかで、各項目の濃度がわかる。測定データはBluetooth(近距離無線通信)でスマートフォンに送られ、アプリ内に蓄積される。
ニードル型のウェアラブル機器の特徴は、針の細さが髪の毛の5分の1程度で、注射のような痛みがほぼなく、ワイヤレス通信を使うので身体の動きを制限されることもない。単発の測定と違い、継続的に値を追えるため、値が上昇するタイミングを把握しやすく、上昇する原因も特定しやすい。
従来のウェアラブル機器にない特徴は、3項目を同時測定できること。持続血糖測定器や呼気のアルコール検知器など、これまでは1項目しか測定できなかった。
例えば、飲酒すると血中のアルコール濃度が高まり、血糖値が下がるため、糖尿病患者は低血糖症になりやすくなる。この機器を使えば、どれぐらいのアルコール濃度でどれほどの血糖値が下がるかがわかるため、飲酒量の目安を知ることができる
また、乳酸値を連続測定できる機器は従来にない。乳酸値の上昇は筋肉疲労を表すことから、スポーツ選手のオーバートレーニングによる故障を防ぐアイテムになる。
急激な運動(無酸素運動)で乳酸が過剰に分泌されると、血液が酸性になって、糖尿病患者は過呼吸や低血圧、脱水、低体温などを引き起こすため、乳酸値を常時測定する機器は医療分野でも求められている。
この機器をつかった測定結果は、病院で行われている一般的な検査の結果と変わらなかったことから、安心して使用できる。
ただ、現段階での測定可能時間は5~6時間のため、数日~数週間連続で計測できるよう改良し、測定項目を増やしてから商品化するという。
連続測定が求められる項目といえば、排卵日の1~2日前に急激に増え、すぐに元の量に戻るLHホルモン(黄体形成ホルモン)だ。妊活のタイミング法で活用されているが、尿で単発的に測定する手法しかなく、上昇時を逃してしまう可能性があった。
不妊治療の件数が増加する昨今、LHホルモンを連続測定できるウェアラブル機器の需要は高いと思われる。検査項目に入るよう期待したい。
腕に貼り付けるだけで血糖値、アルコール濃度、乳酸値を測定できる機器(写真引用:カリフォルニア大学サンディエゴ校ニュースページ)
電子センサーやバッテリー、Bluetooth機器等を内蔵した部品(左)と、使い捨てのマイクロニードルアレイ(微小針集合体)(右)で構成(写真引用:1枚目の写真と同じ)
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