新型コロナウイルス感染症の後遺症は回復後の生活に大きな影響を及ぼす
2021-03-12

Cellspect Co., Ltd.  2021年3月12日更新

 

新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界各国の取り組みにより徐々に収束しつつあります。 一方、WHOの欧州地域本部長は、2月25日の記者会見で、欧州で10人に1人の新型コロナ感染症罹患者が、回復後12週間経っても依然不快感を持ち、その経過が長期化していることを報じました。また、WHOも回復後の長期的な影響について、理解していく必要性を述べています。

新型コロナウイルス感染症の後遺症は「ロングCOVID」と呼ばれ、その症状は新型コロナウイルス感染症に典型的なものであり、回復以降、長期にわたります。これまでのところ、大半の患者は2~3週間以内に完全に回復し、それ以外の患者では数週間から数カ月以上症状が持続しますが、なぜその違いがでるかについての理由は解明されていません。若年の健康な人や軽い症状しか示さなかった患者でさえ、「ロングCOVID」に苦しむことがあります。

英国国立健康研究所による初期の解析では、新型コロナウイルス感染症の後遺症は、以下の4つに分類されるのではないかと示唆しています。

1. 肺と心臓への恒久的な損傷
2. 集中治療後症候群(PICS)
3. ウイルス感染後疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群
4. 新型コロナウイルス感染症の症状継続

つまり、ウイルス感染による肉体的損傷、及び治療による影響が、新型コロナウイルス感染症の後遺症となって現れます。最も多く報告されている後遺症には以下となります。
・倦怠感、頭痛、微熱
・息切れ、咳、胸痛
・関節痛、筋肉痛、脱力感
・うつ病、認知障害

さらには、それほど一般的ではありませんが、以下のような深刻な合併症が報告されています。
・循環器系:心筋炎、心室機能障害
・呼吸器系:肺機能異常
・腎臓:急性腎障害
・皮膚科:発疹、脱毛症
・神経性疾患:嗅覚・味覚障害、睡眠調節不全、認知機能の変化、記憶障害
・精神的:不安、気分変動

米国国立衛生研究所は、新型コロナウイルス感染症に関する暫定ガイドラインを公開しており、これには回復後の後遺症に関しても述べられています。長期間続く後遺症の解明には、長い時間の研究が必要です。このガイドラインは新たな情報が得られ次第更新されていきます。これらの情報から、このウイルスに対する治療戦略や公衆衛生対策の情報を得ることができます。

これまでのところ「ロングCOVID」に対する有効な治療法はどの国からも見いだされていません。対症療法で症状緩和するしかありません。多くの国でパンデミックを軽視したがために大きな犠牲を払ってきました。世界的流行はいつかは過ぎてしまうとしても、まだ多くの課題が残っているようです。現在、米国では健康追跡、後遺症相談、医療支援を行う「新型コロナウイルス感染症回復者支援グループ」があります。

日本では未だ回復者へのケア体制は顕著ではありませんが、今後、回復者に対する公的支援のあり方の議論が必要となるでしょう。

 

引用文献:

  1. World Health Organization: WHO https://www.who.int/
  2. CDC “Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines”: https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/
  3. Taquet M et al. November 2020. "Bidirectional associations between COVID-19 and psychiatric disorder: retrospective cohort studies of 62 354 COVID-19 cases in the USA". The Lancet. Psychiatry.

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