人獣共通感染症出現の主な原因は、人口増加および高い人口密度である
2021-04-23

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年4月23日更新

 

     シドニー獣医科学学校の新たな研究によると、人類はさらなるパンデミックを引き起こしかねない環境を作りつつあります。彼らの新しいモデリングによると、生態系の変化、気候変動および経済発展が、病原体を多様化させる重要な因子であることを示しています。病原体の多様化は、新しい病気の発生につながる可能性があります。


 この研究は、国際学術誌 「Transboundary and Emerging Diseases」 に発表されました。(この研究では、感染モデルを開発するために、13,892 の固有の病原体の組み合わせと 49 の社会経済的および環境変数を使用しました。190 カ国からの情報を元に、統計モデルを用いて分析し、新興感染症および人獣共通感染症 (動物と人間の間で感染する病気) の原因を同定しました。)

 

 人口が増えると、住宅需要も増える。この需要を満たすために、人間は野生生物の生息地を開発する。これは、従来人間と接触がなかった野生生物との接点が増え、野生生物から新しい病気をうつされる可能性を高めます。この研究を実施した、感染症専門家であるワード教授は、この感染モデルについて、次のように述べています、「今日まで、このような生活環境と関連づけられた感染モデルはなかったため、なぜ新しい病気が発生するのか理解が難しかった。この感染モデルは、次の新型コロナウイルスのような感染症の拡散防止に有効です。」

 

 また、この研究によると、土地面積が広く、人口密度が高く、森林面積が大きい高所得国では、人獣共通感染症の多様性が大きいことを発見しました。また、人口と人口密度の増加が人獣共通感染症の出現の主要な推進力であることを明らかにしました。世界人口は 1900 年の約16億人から今日の約78億人に増加し、生態系に圧力をかけ続けています。

 

 研究者たちはまた、気温や降雨量などの気象要因が、人間の病気の多様性に影響を与えている可能性を指摘しました。より高温では、より多くの病原体が出現する傾向があります。これらの要因を総合すると、人間の活動による気候変動を含む自然開発は、環境を破壊するだけでなく、新型コロナウイルス感染症のような新しい感染症発生の原因となっていることが明らかになっています。近年、大きな影響を与えた人獣共通感染症には、SARS、鳥インフルエンザA (H5N1) 、豚インフルエンザ (H1N1) 、エボラ、ニパウイルス(Nipah) 感染症などがあります。

 

 「私たちの分析は、持続可能な開発が生態系を維持し、気候変動を遅らせるために重要であるだけではないことを示唆しています。 それは病気の制御、緩和、または予防に情報を与えることができます」と、ワード教授は述べています。「国レベルのデータを使用しているため、すべての国がこれらのモデルを使用して、将来のパンデミックの可能性を公衆衛生政策や計画に活用することができます。」

 

引用文献:

1. Balbir B Singh et al. 2021 Mar 16 “Geodemography, environment and societal characteristics drive the global diversity of emerging, zoonotic and human pathogens” Transbound Emerg Dis.

2. Emily Henderson. 2021 Mar 30 "Research finds key factors that could lead to further pandemics” News Medical Life Sciences.

3. 2021 Mar 30 "Factors that may predict next pandemic” The University of Sydney news release.

 

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