麻疹、ポリオ、BCGのワクチンはコロナウイルスに対する免疫を高める
2021-05-28

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年5月28日更新

           

 世界が新型コロナウイルスワクチン接種を待ちわびている中、一部の科学者たちは、すでに他の病気に使用されているワクチンが、コロナウイルスによって引き起こされる最悪の影響から何らかの保護をもたらすのではないかと考えています。
 5月18日に、グローバル・ウイルス・ネットワーク (GVN) は、結核 (BCG)、麻疹、ポリオなどの弱毒化生ワクチン (LAV) が、他の感染症を緩和する自然免疫を誘導し、新型コロナウイルス感染症や将来のパンデミックの脅威に対する人体の自然な緊急反応(human body's natural emergency response)を引き起こす可能性があることを提案しました。

 グローバル・ウイルス・ネットワーク (Global Virus Network; GVN) は、世界35カ国、63のエクセレンスセンターと11の関連会社に所属するヒトおよび動物ウイルス学者とその同僚から構成される連合組織です。GVNの科学者たちは、前述の生ワクチンがパンデミック曲線を曲げ、公衆衛生資源の枯渇を回避し、不必要な死を防ぐための重要なツールとなる可能性を示唆しており、この研究を進める価値があるとしています。この論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。

 ヒトの自然免疫反応は、侵入してきた新しい病原体に対する最初の防御ラインです。あらゆる感染症の結果は、病原体と宿主の防御システムとの間の競争に左右されます。これまでのところ、疫学的、臨床的、生物学的証拠から、既存の生ワクチンによる自然免疫の誘導、すなわち広く有効なワクチンは、コロナウイルスのような無関係の感染症を防御することができ、新興病原体による流行を制御にも利用できることが示唆されています。特に、新型コロナワクチンが普及していない国では、特定のワクチンが利用可能になるまでの間、生ワクチンがそのギャップを埋めることができるため、非常に価値があります。

 カリフォルニア大学グローバルヘルスサイエンス研究所およびGVNの主要なグローバルヘルスエコノミストであるDean Jamison博士は、次のように述べています。「新型コロナウイルスのように比較的早くワクチンを開発できた場合でも、安全で効果的なワクチンが世界中で製造され、試験され、流通し、世界的に供給されるまでには、1年半から2年かかります。この間、数え切れないほどの命が失われ、世界経済にも大混乱が生じています。これは、ワクチンの開発がより困難で、感染がより迅速で、集団免疫の獲得がより困難な将来のパンデミックの場合には、さらに悲劇的なものとなる可能性があります。自然免疫を刺激する生ワクチンは、効果的なワクチンが広く普及するまでの間の応急として役立つでしょう。」

 自然免疫刺激は、感染を防ぐだけでなく、病気の初期段階で治療的に利用したり、特定の適応免疫応答を促進するワクチンの有効性を高めたりする可能性もあります。米国食品医薬品局 (FDA) ワクチン研究審査局の研究副局長であり、GVNセンター長である Konstantin Chumakov博士は、「この可能性は理論的なものですが、さらに研究を進める価値があります」と、述べています。「昨年、サイエンス誌に掲載された展望で述べたように、1960年代から1970年代にかけての経口ポリオウイルスワクチン (OPV) を用いた研究では、非特異的な免疫防御が実証され、OPVが季節性インフルエンザや急性呼吸器疾患の発生を抑制することがわかりました。」

 2014年、ワクチンに関する専門家の戦略的諮問グループ (SAGE) の勧告により、世界保健機関 (WHO) の委託したレビューでは、生ワクチンが子どもの死亡率を予想以上に低下させると結論付けられました。米国を含む高所得者層でも、最新のワクチンと同様に生ワクチンを接種すると、非標的型感染による入院リスクが半減することが明らかになりました。

 GVNは、結核や天然痘に対する生ワクチンは長期生存率の向上に関連していると述べています。例えば、西アフリカで実施されたOPV予防接種では、全原因死亡率が25%低下し、さらに追加投与毎に死亡率がさらに14%低下しています。SARS-1、SARS-CoV-2、MERSなどのコロナウイルスの制御には、自然免疫が中心的に重要性であることが、いくつかの基礎科学的知見から明らかになっています。さらに、コウモリによるコロナウイルスの制御は、抵抗性と寛容性の間で自然免疫反応のバランスを適切にとることと大きく関係しています。科学的にも公衆衛生的にも、生ワクチンが新型コロナウイルス感染症を予防したり、その重症度を軽減したりする効果を厳密に評価することは極めて重要です。これらの試験から得られた知見は、将来のパンデミックに備えて生ワクチンをツールキットに組み込むことができるか、またどのように組み込むべきかどうかを教えてくれるでしょう。

 

引用文献:

1. Ashutosh Pandey. 2021 May “Explainer: Why patents on COVID-19 vaccines are so contentious” Deutsche Welle News Release.

2. 2021 May “US support for waiving COVID-19 vaccine patent rights puts pressure on drugmakers – but what would a waiver actually look like?” The Conversation News Release.

 

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