危ない?インド変異株
2021-06-11

危ない?インド変異株

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年6月11日更新

 

 新型コロナウイルスの変異株が、世界中で出現し、世論を騒がせている。この騒ぎから、世界保健機構(WHO)は5月、変異株の中でも、特に蔓延が懸念されるものを「VOC」と、それほど懸念は無いが、まずまず注視すべきものを「VOI」と、ランク付けした。

 「VOC」は、高い感染力があり、重症化するリスクがある変異株。「VOI」は、多少の感染力はあるものの、従来のコロナの重症化率と差が見られない。つまり、重症化への明確な根拠がない変異株を、示すことにした。

 5月中旬には、インド変異株 (SARS-CoV-2B.1.617.2)を、「VOC」と発表。この変異株は、インドで初めて発見され、その後イギリスでも検出された。以後、この2国では、それまで蔓延していたイギリス変異株が消え去り、ほぼ全てが、この変異株と置き換わったことから、極めて感染力の高い変異株と判断された。”

 

 こうした状況下でWHOは、現在流通しているワクチンが、十分に効かない可能性があると発表した。フランスのパスツール研究所も、「インド変異株に対しては、ファイザー社とアストラゼネカ社のワクチンの効力が低下する」と、公表している。イギリスの研究所「Francis Crick Institute」によると、ファイザー社のワクチンを接種した人は、インドの変異株に対する抗体が、5分の1以下になっている可能性が高いと示した。

 そんな中で、ロンドンのインペリアル・カレッジは、コロナウイルスの表面にあるトゲのような部分「スパイクタンパク質」の681番目のアミノ酸が、インド変異株では突然変異していると発表。この変異によって、ウイルスの感染力と複製性(増殖)が高まったとしている。

 インド変異株が発生する前のコロナウイルスは、病原性を高める3要素「感染性」「複製性」「毒性」のうち、感染性が際立っていた。しかし、インド変異株は、複製性も高いことが、上記の研究ではっきりした。これは、ワクチンや治療薬の開発の知見になりそうだ。

 日本でも最近、このインド株が確認されている。ワクチン接種が普及されつつあるが、この変異株の流入に注視したい。

 

 

 

 

 名前/通称(*1)注目すべき変異従来株と比較ワクチンや治療への影響*2
イギリス変異株

B.1.1.7

S.501Y.V1

(Alpha)

• N501Y (感染力↑)

• 69/70 Δ (ウイルスS遺伝子をターゲットとする診断PCR検査の精度を低下させる)

• P681H (ウイルスと細胞の親和性を高める)

• 伝染性増加 50-70%

• 入院および致死率に基づく重症度の増加の可能性

•回復期およびワクチン接種後の血清による中和に対する影響少ない

•ワクチンに~10%有効性低下

• モノクローナル抗体治療への影響なし      

南アフリカ変異株

B.1.351

S.501Y.V2

(Beta)

• N501Y (感染力↑)

• E484K (免疫逃避)

• K417N (中和抗体の弱体化)

• 伝染性増加 50%

• 毒性不明

• 有効的な中和抗体が減少

•ワクチンに ~10-30%有効性低下

•bamlanivimabとetesevimabモノクローナル抗体治療の併用に対する感受性を有意に低下させる

ブラジル変異株

P.1

S.501Y.V3

(Gamma)

• N501Y (感染力↑)

• E484K (免疫逃避)

• K417T(中和抗体の弱体化)

• 伝染性増加40-120%

• ~45%以上の致死性

• 有効的な中和抗体が減少

•ワクチンに~10-30%有効性低下

•bamlanivimabとetesevimabモノクローナル抗体治療の併用に対する感受性を有意に低下させる

インド変異株

B.1.617.2

(Delta)

• E484Q (免疫逃避)

• L452R (調査中)

• P681R (ウイルスの複製、伝達、および病原性を高める可能性が高い)

• 伝染性増加~115%

• 有効的な中和抗体が減少

•ワクチンの有効性を低下させる可能性がある

資料出典:世界保健機関、アメリカ疾病予防管理センター、欧州疾病予防管理センターなど

 

*1. WHOのラベル.

*2. 臨床試験の結果は現在進行中であり、一部のデータはまだ完全には公表されていない

 

引用文献:

  1. WHO: Tracking SARS-CoV-2 variants: https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
  2. CDC: SARS-CoV-2 Variant Classifications and Definitions: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/variant-info.html#Consequence
  3. European Centre for Disease Prevention and Control: https://www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/variants-concern
  4. Thomas P. Peacock et al. 2021 May 28 “The SARS-CoV-2 variants associated with infections in India, B.1.617, show enhanced spike cleavage by furin” bioRxiv.
  5. Emma C Wall et al. 2021 June 3 “Neutralising antibody activity against SARS-CoV-2 VOCs B.1.617.2 and B.1.351 by BNT162b2 vaccination” The Lancet.

 

 

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