新型コロナ変異株を食い止める:科学者たちの4つの提案
2021-06-25

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年6月25日更新

 

 世界最大級のバイオテクノロジー展示会「BIO Digital 2021」が、6月14~18日にオンライン上で開かれ、バイオテクノロジー(生物工学)のツールで、新型コロナウイルスの収束に役立ったものが示された。その中で専門家らが提示した、コロナの変異株に効果的とされる4つの対策を紹介する。

 

 

◆リアルタイムの情報共有、専門家同士のネットワークを世界に広げる

 米国保健省予防・対応次官(ASPR) は、流行地域やウイルスの遺伝子型が、急速に変化する中では、ウイルスの「監視」が重要と強調した。
 感染症の動向を把握したり、対策の効果を判定する監視「サーベイランス」を例に挙げ、症例だけなく、ウイルスの遺伝子型(配列)を、全世界で共有する必要があるとした。
 この1年で、病院への通知システムや治療薬、診断薬などのサプライチェーンを大幅に改善した米国も、「ウイルスの遺伝子配列を全世界で共有すれば、効果的に変異株の流行を抑えられる」と言っている。

 

 

◆ワクチンだけでなく、ウイルス遺伝子(RNA)を直接攻撃する治療薬が必要

 世界中でワクチンが開発されているが、変異株をすべて網羅することは難しい。世界最大手の製薬会社「MSD Global Pharmaceuticals」の社長は、ウイルスのスパイクタンパク質をターゲットにした現在の治療薬や、ワクチンでは、収束には不十分とした。ウイルス遺伝子全体を攻撃して、機能を破壊する薬剤が、変異株に有効で、それが収束につながると示した。

 

 

◆抗体を体内に注入する医薬品(抗体薬品)は、「筋肉注射」をトレンドに

 新型コロナウイルスの抗体薬品は、すべて静脈注射で注入される。それを、筋肉注射に変えれば、注入する薬剤量を大幅に減らせる。また、筋肉注射方式にすれば、複数の抗体を混合した治療薬の注入も可能になり、抗体の有効性が高まると期待される。

 

 

低所得国における医療インフラの整備

 医療資源が乏しい低所得国は、治療薬の実証研究や、感染の有無を調べる検査の実施が難しい状況にある。低コストでそれらができれば、低所得国に対する医療資源の普及が実現し、ウイルスの流行や変異株の出現を防ぐことができる。

 

 

変異株の流行阻止、パンデミックの収束に必要な政府の姿勢

 世界大手の検査機器メーカー「Roche(ロシュ)」の連邦保健政策担当ディレクターは、検査は、感染者の早期発見と隔離につながり、感染拡大を抑制する機能を持つことから、検査自体が「パンデミック(世界的大流行)の早期収束に役立つ」と強調した。
 それに加え、一度に大量に検査する「ハイスループット検査」を活用しながら、医療機関や患者に迅速に結果を伝えるデジタルシステム(IT化)を構築することが、感染拡大を防ぐ鍵と説いた。
 「各国政府は、一般家庭や医療機関で使う検査アイテムの緊急的な薬事承認制度を、積極的に作ること。また、世界中に輸出できるよう、自国の輸出関連会社と連携すべき」とした。
 さらに、革新的な検査アイテムを開発し続けるためには、スピーディな承認審査を実施しながら、開発企業に対する投資を積極的に行う必要があると示した。
 つまり、パンデミックを収束させるには、国が優れた検査機器と検査能力を常備することが、必要不可欠といっている。

 

 

引用文献:

  1. Bio Digital 2021: https://www.bio.org/events/bio-digital
  2. Bio Digital section: Diagnosing the Future: The Impact of the COVID-19 Pandemic on Diagnostics

 

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