新臨床試験、純国産ワクチン実用化を後押し。鼻腔内投与ワクチンも
2021-08-20

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年8月20日更新

 

 現在、国内で接種されている新型コロナウイルスのワクチンは、すべて海外開発品で、「純国産ワクチン」が、未だ普及していない。しかし、政府がワクチンの臨床試験(治験)の条件を緩和したことから、国内製薬メーカー4社が開発を進めているワクチン(5種類)の実用化が、一気に近づいた。

 これまで、新型コロナワクチンの臨床試験は「プラセボ対照試験」が原則だった。これは被験者を2グループに分け、開発した実薬と偽薬(プラセボ)を、それぞれに投与する方法。実験者も被験者もどちらが実薬なのかを知らないため、先入観に惑わされず、正しい効果を検証できる。しかし、新型コロナのワクチン接種者が増えていることから、未接種者を確保するのが困難になっていた。

 そこで、日本と英国の医療品規制当局(PMDA、MHRA)は、6月に開かれた国際医薬品医療機器総合機構 (ICMRA)主催のオンラインセミナーで、新しい臨床試験方法を提案。被験者全員に実薬を投与する「実対照薬試験」の一種で、既存の治療薬(ワクチン)より劣っているか、いないかだけを見る「非劣勢」試験を勧めた。

 この提案から、製薬大手の第一三共(東京都)は、開発中のワクチン「mRNA新型コロナワクチン」の最終臨床試験に、新試験方法を用いると発表。既に効果が証明されているファイザー社、モデルナ社のワクチンと同等の効果か、それ以上かを検証する。詳細は非公開だが、感染を防ぐ作用を持つ「中和抗体」をはじめ、新型コロナウイルスに対抗する抗体の総量が、どれほど増えるかを比較することで、効果を判断すると思われる。

 ちなみに、この「mRNA新型コロナワクチン」は、人の細胞内でウイルスの一部(タンパク質)を生成して抗体を作るタイプのワクチン。このタイプが国内生産されるのは初で、これまでの試験では優れた安全性と有効性を示している。最終臨床試験の結果に期待したい。

 同じく製薬大手の塩野義製薬(大阪府)は、開発中のリコンビナントプロテインワクチン「S-268019」の最終臨床試験を、東南アジア等で大規模に実施する予定。

 さらに同社は、東京大学のベンチャー企業(HanaVax社)の特殊技術を用いて、鼻から投与するワクチンの開発を進めている。鼻腔内投与は、注射が要らず、血中に抗体を作りながら、ウイルスが付着する呼吸器系の粘膜に抗体を作るため、従来より感染予防に効果があるだろうと言われている。

 

 各社のワクチンが実用化され、ワクチンの種類が増えれば変異株に適応する可能性が増える。また、純国産ワクチンが増えれば、国内のワクチン供給が安定するため、国内の感染予防がさらに進む。各社の開発に期待したい。

 

引用文献:

  1. Jul 19, 2021 “Global regulators promote platform trials to assess new COVID vaccines” Regulatory Affairs Professionals Society
  2. Jun 24, 2021. “ICMRA COVID-19 Vaccine development: Future steps Workshop” ICMRA
  3. KENYA AKAMA et al., Jun 13, 2021. “Japan nears homegrown vaccine with Daiichi Sankyo Phase 3 trials” Nikkei Asia

 

 

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