“いいとこ取り”のオミクロン株は驚異?
2021-12-10

セルスペクト(株)科学調査班編集
2021年12月10日更新

 

 

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が、世間を騒がせている。

 11月12日に南アフリカで初めて確認され、世界保健機関(WHO)は「流通しているワクチンや治療薬が効きにくい可能性があり、公衆衛生上の驚異になる」と判断し、『懸念すべき変異株(Variant of Concern:VOC)』に指定した。(この指定によって「オミクロン株」と名付けられた)

 

 

 

―特徴―

 

 ウイルスの表面にある突起「スパイクタンパク質」の変異の多さが、従来の変異株と最も異なる。塩基配列(DNA配列)の変化を原因に、32個もの変異が見られる。

 これまで出現した変異株たちが、感染力を高めるために変異した点が凝縮されたイメージで、まさに“いいとこ取り”。強い感染力を備えている。

 

 

 

ー変異による影響ー

 

 スパイクタンパク質は、外側の「S1」、内側の「S2」の領域に分かれる。

 ①オミクロン株は、複数の遺伝子変異によってS1、S2の形状が変化している。そのため、従来型のS1、S2を標的にしているワクチン由来の抗体は、結合しにくい。

 つまり、ワクチンを打っていても感染する「ブレークスルー感染」が起こりやすいということだ。

 

 ②S1部分が、鼻粘膜表面に多く見られる細胞「ACE2受容体」とより結合しやすい形状に変化している。これにより、ウイルスが人の細胞に入り込みやすくなり、感染の確率が高まるといわれている。

 

 

 

「スパイクタンパク質とACE2受容体の構造解析図」

 オミクロン株で見られた変異箇所を、紫色の球体で示している。

 

 

 ―PCR検査で発見できるー

 

 オミクロン株は、現在流通しているPCR検査で発見できる。PCR検査は、ウイルスが持つ複数のタンパク質の遺伝子を検知する機能があるためだ。実際の臨床現場で、検出可能なことが確認されている。

 

 

 

 ―ワクチンや抗体医薬品、経口治療薬は効くのかー

 

 流通している「ワクチン」は、スパイクタンパク質の動きを封じ込め、体内に抗体を作る。

 スパイクタンパク質が変異しているオミクロン株に効くのか、懸念されており、各製薬メーカーで検証している。

 年内には明らかになる見込みだが、南アフリカ国立感染症研究所(NICD)は「感染予防の効果は弱まるが、重症化や死亡を防ぐ効果はある」と言っている。

 

 スパイクタンパク質をターゲットにした“人工的な抗体”で出来ている「抗体医薬品」にいたっては、変異の多いスパイクタンパク質には、効きにくい可能性が高い。これも、臨床データの蓄積・分析が必要だ。

 

 「経口治療薬」は、スパイクタンパク質にアプローチするわけではないため、効果が見込める。

 

 

 

―重症化、死亡例はないがー

 

 オミクロン株による重症化は、まだ報告されていない(12月上旬時点)。米政府は12月5日、症例の精査が要ると前置きした上で「感染後の重症化率は、さほど深刻ではない」と述べた。

 ただ、発生したばかりで症例が少なく、病原性や感染性の詳細は未だ不明。南アフリカ北東部のハウテン省では、2週間で感染者が急増しているため、楽観視はできない。

 感染力や重症化率、ワクチンや治療薬の有効性が、(臨床データの蓄積等から)明確になるのは、約2ヶ月後とみられる。

 

 

 

―感染予防対策の継続を―

 

 国内で確認されたオミクロン株の感染者は、未だ3人(12月6日時点)。

 日本政府は12月2日に、航空会社に要請していた「国際線の新規予約の停止」を解除したものの、外国人の新規入国を原則禁止している。

 一方、米国は、南アフリカなど8カ国からの入国を制限したが「妥当な期間で解除できるようにしたい」と言っている。

 国によって対策の厳重さに差が出てきたオミクロン株。重症化や死亡には至らないという見解が多いが、未だ不明な点も残っているため、絶対に安心とは言えない。

 最善の策は「感染しないこと」。手洗い、消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンスの確保など、基本的な感染予防対策を継続しましょう。

引用文献:

1. WHO“Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 Variant of Concern”

2. 27 Nov, 2021, “Why is Omicron so scary?” Mail Online News

3. 26 Nov, 2021, “CDC Statement on B.1.1.529 (Omicron variant)”

 

 

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