セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年2月4日更新
世界中で感染が広がるオミクロン株。この変異株の存在によって、(新型コロナの)感染者数が過去最高を記録した国も多く、年末年始の新規感染者は952万人に上った。約1週間でこれほど感染者数が急増したのは、新型コロナ感染の流行後初めて。(世界保健機関調べ)
感染者が急増する一方、重症化数は極めて少ない。過去の感染やワクチンによって抗体がある人は、オミクロン株に感染しても軽症で済むことが多いからだ。 ※Vol.31を参照。
肺に侵入するウイルス量が少ないのも、重症化が少ない理由と言える。オミクロン株のウイルスは、鼻や咽頭にとどまる割合が多く、肺に入る量は、他の変異株の侵入量と比べて10分の1以下。そのため肺損傷などが起きづらい。
米国医師会雑誌(JAMA)で発表された英国スコットランドのデータをみると、デルタ株感染者と比べ、オミクロン株感染者の入院率は70%も低かった。イングランドでは、オミクロン株感染者の入院率は40%にとどまった。
感染力の高さ、重症・死亡率の低さから、「風邪化している」という見方もある。しかし、ワクチン接種対象外となっている12歳未満の子どもの感染者数が増えていることや、感染者数の急増が医療崩壊を招くリスクを見逃してはならない。
軽症に留まっているものの、感染やワクチンでできた抗体が効きにくい点も要注意だ。
米国ヤンセンファーマ社、ロシア国立ガマレヤ研究所、中国国営企業「シノファーム(中国国家医薬集団)」のワクチンは、オミクロン株に全く効かないことがわかっている。
米国のモデルナ社、ファイザー社、アストラゼネカ社のワクチンは、ある程度は効果的だが、その効果は、従来のウイルスと比べて20分の1~40分の1程度と、とても低い。
一度感染した人が、ワクチン接種で抗体の力を高めたとしても、効果は5分の1程度という。
仏国パスツール研究所がファイザー社、アストラゼネカ社のワクチン接種の5ヶ月後の効果を検証したところ、初期の新型コロナウイルスやデルタ株には有効だったが、オミクロン株には効かなかった。
従来のワクチンが効かないオミクロン株。感染者数が急増し続ければ、ウイルスの変異が進んでしまう危険もある。医療崩壊や変異を防ぐには、予防対策を継続しながら、3回目の接種でワクチンの効果を高めること。とにかく感染者数を増やさないに尽きる。
引用文献: