軽症、無症状でも要警戒。心疾患の確率高まる
2022-02-25

セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年2月25日更新

 

 

「風邪化に向かっている新型コロナウイルスは、もはや驚異ではない」

 そう思うのはまだ早い。国際学術誌「Nature Medicine(ネイチャー メディシン)」の論文で、『重症、軽症問わず、新型コロナの感染者は、回復1年後に脳血管障害や心膜炎、心筋炎、心不全などになる可能性が高まる』と示された。

 たとえ軽症であっても、感染すれば、心疾患系の病気(心臓に起こる病気)になりやすいというのだ。

 

 この論文は、コロナに感染した米国の元軍人15万3,760人を研究した結果。感染回復後の翌年に、心疾患系のトラブルを起こす確率は、未感染者の割合と比べ、63%高かった。つまり、感染によって心疾患系の病気にかかる可能性が約1・6倍になるということである。

 

 中でも特に、心不全や心臓発作を起こす確率が(未感染者と比べて)高く、心房や、心拍動の命令を出す洞結節などの機能不全から、不整脈を起こすケースが多かった。

 

 

 また、重症や軽症だけでなく、無症状であっても、心疾患等の病気になりやすいと分かった。

 

 無症状の患者が、回復後に心臓や血管に炎症を起こした例が、米国医学雑誌「JAMA Cardiology(カーディーオロジィ)」の論文で紹介されている。

 この論文では、脳や他の臓器で起きた血液の炎症が、新型コロナの後遺症である脳に霧がかかったような症状「ブレインフォグ(脳の霧)」を引き起こす可能性があると言っている。

 

 

 

 上述の研究結果から、発症中に起きると思われていた心疾患系のトラブルが、回復後も、そして軽症、無症状であっても起きるとわかった。

 さらに、一般的に心疾患になりやすいと言われる高齢や肥満、高血圧、糖尿病、腎臓病、高脂血症の人以外も、感染すると心疾患の可能性が高まると言われている。

 

 

 心疾患を防ぐ最善策は「感染しないこと」。しかし、世界の感染者はすでに3億5500万人に上る。

 心疾患系の後遺症の患者が今後増加するのは避けられず、各国の政府や医療機関は、これらに対応する医療制度や経済的支援を整える必要がある。

 

 恐いのは、心疾患系の病気になりやすいのは確かなものの、感染と心疾患の因果関係が、いまだに明らかになっていない点だ。このメカニズムが解明されるまでは、軽症や無症状の感染であっても油断ならない。

 回復してから半年後には、心臓など全身の精密検査をしっかりと受け、早期発見・早期治療に努めるほかないだろう。

 

 

 

引用文献:

  1. Yan Xie et al., Feb 7, 2022, “Long-term cardiovascular outcomes of COVID-19” Nature Medicine
  2. Bruce Y. Lee, Feb 13, 2022, “Study Finds Increased Heart Disease, Stroke Risk After Surviving Even Mild Covid-19” Forbes
  3. Sarah Newey, Feb 8, 2022, “Heart attack risk increases 63pc post-Covid, says major American study” The Telegraph
  4. Saima May Sidik, Feb 10, 2022 “Heart-disease risk soars after COVID — even with a mild case” Nature
  5. Curt J. Daniels et al., May 27, 2021 “Prevalence of Clinical and Subclinical Myocarditis in Competitive Athletes With Recent SARS-CoV-2 Infection” JAMA Cardiology

 

 

<免責事項>
本情報は、当社の販売商品やサービスとは一切関係ありません。また、記載内容はあくまでも編集者の主観に基づいたものであり、その正確さを保証するものではありません。より、詳しくは、上記の引用文献にある公的報告書、査読付き論文を参照してください。本記載内容を転載することは自由ですが、これにより発生したいかなる事象についても弊社では一切責任を負いません。

いいね!済み いいね!
9 人が「いいね!」しました。
アクセスランキング