セルスペクト(株)科学調査班編集
2022年3月25日更新
新型コロナウイルスの感染や重症化を防ぐ点鼻薬が、2月に誕生した。インドの皮膚・呼吸器系医薬品メーカー、グレンマーク・ファーマシューティカルズ(Glenmark Pharmaceuticals)社と、カナダのバイオ企業サノタイズ・リサーチアンドディベロップメント(SaNOtize Research&Development)社が共同開発した一酸化窒素点鼻薬(Nitric Oxide Nasal Spray)。商品名は「ファビスプレー(FabiSpray)」という。
体内で生成され、抗菌性を備えたナノ分子の一酸化窒素と同じ成分を用いており、鼻粘膜に塗布すると、ウイルスを殺し、肺への侵入を防ぐ。そのため感染予防、感染期間の短期化、重症度の軽減といった効果が見込める。
成人の感染者約300人を対象にしたインドでの臨床試験では、この点鼻薬の投与後、ウイルス量が最初の24時間で約95%減少し、48時間後には約99%減った。
グレンマーク社によると、この薬は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ変異株などの変異株のほか、鼻風邪ウイルスのライノウイルスやH1N1型インフルエンザウイルスなど、さまざまなウイルスに効く。
デルタ株とオミクロン株の特徴を持つ「デルタクロン株」がブラジルで確認されるなど、感染力の強い変異株が出現し続けているため、この薬の汎用性は強みになる。
「ファビスプレー」は25mlボトル、12米ドル(約1,400円)で販売されており、医師の処方箋があれば購入できる。手に入れやすい値段だ。イスラエル、EU、タイ、インドネシア、バーレーンなどで販売されている。
日本では、2022年1月19日(日本時間)に、メディカル事業を展開するフラクタル社(東京都)の子会社、医療機器製造販売のサイトリ・セラピューティクス株式会社(東京都)がサノタイズ社と契約し、国内で独占販売する。
臨床試験の結果が示すように、この点鼻薬は、感染初期に効果的で、特に重症化する(合併症)リスクを持つ人にお勧めだ。体内で生成される成分を用い、鼻に噴射するだけの使用法のため、研究者らは「安全で効果的な抗ウイルス早期治療薬」と言っている。
感染予防薬として普及すれば、重症患者の増加に伴う医療の逼迫(ひっぱく)を防ぎ、パンデミック(世界的流行)の抑制につながるだろう。
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