変異のパターン化。アフターコロナの兆し
2022-05-27

セルスペクト(株)科学調査班編集

2022年5月27日更新

 

 

 新型コロナウイルスのオミクロン株は、2系統の「BA.1」と「BA.2」に分かれており、日本を含め主流な系統は「BA.1」で、世界で最も感染数が多かった。しかし最近、感染力が強いと言われる「BA.2」から派生した3種類のウイルスの感染が、世界中で広がっている。

 

 まず、BA.2から派生した「BA.2.12.1(ビーエー・ツー・ワンツー・ワン)」は、4月30日までの1週間で、米国の感染者の36・5%を占めた。(疾病予防管理センター調べ)

 続いてBA.2から派生した「BA.4(ビーエー・フォー)」「BA.5(ビーエー・ファイブ)」は、南アフリカの感染者の6割を占めている。

 この3種類は、デルタ株に見られた「L452R」の変異がみられ、BA.2よりも感染のスピードが速いのが特徴だ。

 

 中でも、南アフリカ以外にも15カ国以上で発見されている「BA.4」「BA.5」は、BA.1に感染して作られた体内の抗体が、効かない場合があるという。つまり、オミクロン株に再感染するため、一度収まった感染数がふたたび増加する可能性がある。

 

 オミクロン株を最初に発見した生物情報学者トゥーリオ・デ・オリベイラ教授は、この3種類の出現から「新型コロナウイルスが、これまでと異なる変異を始めた」と述べている。

 

 これまで新型コロナの変異は、変異の仕方が予想できず、事前に対処できなかった。しかし、この3種類以降の変異株は、今まで出現した株が組み合わされたもので、ウイルスの影響をある程度予測できる。

 この点から、米コロンビア大学のウイルス学者デビッド・ホー教授は「インフルエンザのように、徐々に変異がパターン化する」と予想する。

 パターン化され、発生する変異株をある程度予測できるようになれば、事前にその株向けのワクチンを普及させて、大規模感染を防げる。

 

 

 コロナウイルスは、新型コロナ以外に4種類あり、インフルエンザの症状が出ている10人に1人は、この4種類いずれかの感染だ。

 新型コロナウイルスが、この4種類と同じぐらい身近なウイルスになるには、周期的なウイルスの変異のパターンをある程度予測でき、ワクチン等で感染をコントロールできるようになることが必要だ。

 今回出現した3種類の変異に、パターン化の傾向が見られたということは、身近なウイルスになる日、つまりアフターコロナ社会の実現が近づいているといえよう。

 

 

引用文献:

  1. Carolyn Crist, May 4, 2022, “Latest COVID Subvariants Create New Waves, Evade Immunity”. Medical Device Network
  2. Ewen Callaway, May 6, 2022, “Are COVID surges becoming more predictable? New Omicron variants offer a hint”. Nature.
  3. Houriiyah Tegally et al., May 2, 2022. “Continued Emergence and Evolution of Omicron in South Africa: New BA.4 and BA.5 lineages” medRxiv
  4. Xiaoliang Xie et al., May 2, 2022. “BA.2.12.1, BA.4 and BA.5 escape antibodies elicited by Omicron BA.1 infection” bioRxiv

 

 

 

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